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ネゴするは○○さんにあり

레테210 2016. 7. 9. 14:25

昨日の午後、旅先の喫茶店で暑さをしのぎながら一服していると、知らない人から突然のカカオトークメッセージが。

メッセンジャーの向こうの人は、週明けの月・火の二日間、フルタイムの通訳に対応できるかを聞いていた。

以前仕事を回してくれたことのある通訳エージェンシーのスタッフさんのようだった。

ただ、どこのエージェンシーの誰だかさっぱり記憶にない。カカオトークのニックネームをみても思い出せないのは変わらない。

仕事の上で複数の人間を相手にしているのはこっちだって彼らと一緒。

しかもそのほとんどは電話やメールだけでやり取りしていた、いわば「顔の見えない」パートナーだったし、

このご時勢、エージェンシー業界だってあまり磐石とは言えないのか、しょっちゅう人が入れ替わり、

「先日は○○の件でどうもお世話になりました」と、うかつなことを言っちゃって、

「えっ?あぁ~ 当時の担当はその後やめました」と、アッサリ返されることも最初しばしばあった。

今回は突然話しかけてもたぶん覚えてくれているはず、と思われていたようで少々返事に戸惑った。

やっぱり、短くていいからせめて一行でも自己紹介は入れてほしいものだ。

 

が、私は相手が自己紹介を省いたことに因縁をつけたくてこんな手間隙かけてブログ記事を書いているわけではない。

 


まず、仕事の中身はペンキ関係のビジネス通訳。プラント通訳が含まれていて、良才(ヤンジェ)から安養(アニャン)まで移動する可能性もあるという。

肝心な通訳料金だが、一日(終日)の料金が韓国ウォンで○○万ウォン。もちろん、税込みで。

私の場合、1日(6時間まで)××万ウォン未満の仕事については、安易に引き受けた挙句、後味の悪い経験を何度かしているので、なるべくお断りするようにしている。

○○万ウォンだと、それを1/3もカットされた計算になる。

××万ウォンと○○万ウォンのどちらが正当な金額なのかについて明確な線引きをすることは、なかなかどうして難しい。

××万ウォンという金額は、母校の通訳センターなる機関が出しているテーブルの数字を目安に、自分なりに折り合いをつけて決めた最低金額である。

6時間××万ウォン、あるいは○○万ウォンだって、事情をよく知らない一般の人にはバカに高い金額に見えるかもしれない。

が、その金額設定の根拠の是非について語るのは今度にしよう。とりあえず、両サイドの思惑にこれだけのギャップがあったことだけにしておこう。

 

価格の次は時間だ。今回の仕事開始は、連絡を受けた時点からしてわずか3日後。準備できる時間が2日しかない。

通訳は毎回違う分野の用語や概念などを消化せねばならず、通常、仕事開始2週間前までには告知されるのがこの業界の常識。

この案件の場合、価格と緊急さから、既に何人かの通訳さんたちにたらい回しされた、「ワケあり」仕事である可能性大と直感した。

それでも仕事関係のあらゆる問い合わせや依頼には、なるべく「誠実に対応」するという建前なので(当たり前だが)、

一応は基本料金の最低額を提示し、至急の依頼に適用される追加料金にも言及した。

 

そして、案の定それを最後に、依頼はキレイに"なかったこと"になった。

 

以上で私は、自己基準をはるかに下回る金額を提示されたとか、

あるいは別段割高とも言えない価格について丁寧に説明したつもりが二つ返事でボツにされたとか、

畑違いの人間の目にはどうでもよさそうなことをダラダラと書き込んだのだが、

そんなくだらないことを理由に相手を貶めようとこの記事を作成しているわけでも、無論、ない。

以下、せっかくの旅先で私を一瞬もやもやした気持ちにさせた言葉。

ネゴが激しく、とても対応できません。


私は、どちらかというと、ネゴを大の苦手とする人間だ。

交渉やら駆け引きやら、多分生まれ変わっても得意になれない芸当かもしれない。

値切られることを前提に正当な額より幾ばくかの下駄を履かせ、済まし顔でそのまま見積もりに出すなんて、

いくら世間的にはそれが正解に近い常識として扱われていようと、やはりおかしいのはおかしい。抵抗を覚える。

なにもエラソーに正直者ぶるつもりはない。

ただ、そうしないと、安売りにされたことに後々まで不満がくすぶり、結果、当の仕事はさることながら、次の仕事にまで影響してしまうからだ。

自分が価格を提示する立場のときももちろんだが、逆に、人からモノやサービスを買う場合、つまり価格を提示されるときだって、

ネゴして値切られたときの喜びというのはそう長く残らない。

ここまでネゴできるということは、そもそも本当はどれだけの値打ちのあるものってことよ?

と、こころのどこかでひねくれ者根性が頭をもたげてしまうからだ。

なので知り合いを介した件や特別な割引要因のある件でない限り、私は初めからネゴの可能性などほとんどゼロの「定価」を提示しようと心がけている。

ところが、メッセンジャーの向こう、名無しの担当はそんなことを「激しいネゴ」と、言下にバッサリと切り捨ててしまったのだ。

 

しかもあの短い文章に主語は見当たらない。それでも、前段の「ネゴが激しく」の主体が、話を持ちかけられた「私」であることは容易に想像がつく。

要は、彼女はこの依頼(あるいは交渉)決裂の原因を、相場知らずの「ネゴシエーター」の私になすり付けていたのだった。

ぶっちゃけ、わずか3日後の急な仕事を無責任にも引き受け、しかもそれを業界相場の2/3以下の金額で通訳に宛がおうとしている

ご自分のネゴシエーターとしての能力のなさには気づいていないらしい。

そんな滅茶苦茶な仕事や相手に対応できないのは、むしろこっちだ。

 

しばらく画面を見ていたが、あの断りの文章に続きはなかった。

そして、2人前のカキ氷を完食してもなお首周りにしつこくまとわりつく暑さに辟易したのか

(私が遊びに行ったところは、よりによって昨日、高温注意報が出されていた)、

それとも思いがけないやり取りの不結果、いや、本当は、相手に責任を擦り付けるような妙な言い方に腹が立ったのか、

ムッとした私は挨拶もそこそこに、グループトークルームをさっさと出てしまった。

そのため、彼女がどこのエージェンシーのなんという名前の人なのかは今なお分からずじまい。

やっぱり、チャットを出る前にせめて所属と名前くらい聞いとけばよかった。

ネゴするは我でなく、○○さんにあり、ですよ、と捨て台詞の一言でも残して出てればよかった。

ものすごく格好悪いし、次の依頼をうける確率なんて間違いなくゼロだろうけど、

だって、こっちはせっかくの旅行でのひと時を、一瞬ながら、台無しにされたのだから。

 

※このトークには3人が参加していた。私以外のもう一人の通訳らしき参加者は最初から最後まで無言を貫き、

私の提案が却下されるやいなや、やはり無言のままトークルームを出て行った。